第三者評価の現状とワーク・ライフ...
2014年2月27日
第三者評価の現状とワーク・ライフ・バランス
「第三者評価」と聞いて、皆さんは何を想像するでしょう。何かを評価するということは想定つきますが、では一体何を評価するのか、そしてこの評価事業の目的は何なのか。当法人が行った第三者評価の経験をもとに、事業の本質を解いてみることにします。
第三者評価事業とは?
平成14年度から、保育所を含む社会福祉施設では、利用者でも経営者でもない第三者の専門家が施設内の運営やサービス内容全体を客観的に評価するシステムが開始されました。法的には『社会福祉法』という法律に基づいたものです。
この目的は、①多額の公費を使用している社会福祉施設の運営の公共性を担保し、②事業者には事業運営上の具体的な問題点を把握し、サービスの質の向上をはかるためであり、③利用者には施設の選択に資するという3つの目的を持ったものとされています。
埼玉県内における第三者評価の現状
平成25年度に埼玉県内で第三者評価を受けた保育所は、なんと2施設のみとなっています(12月10日現在)。その内、1施設は当法人が評価した保育所です。
受審はあくまでも任意ですが、社会福祉法の条例に、「社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこと、その他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。」とあるものの、第三者評価にかかる費用の運営費が支給されない埼玉県内の保育所は、自ら第三者評価を受審しようと決断するには、よほどの意志と目的がなければ受審しにくい状況であると推察できます。※東京都においては運営費が支給されます。
第三者評価を受けると、どんな効果があるのか?
第三者評価を受審すると、組織の対内的な効果と、対外的な効果の双方が期待できます。
[対内的効果]
● 自らが提供するサービスの質について、改善すべき点が明らかになります。
● サービスの質の向上に向けた取組みの具体的な目標設定が可能です。
● 第三者評価を受ける過程で、職員の気づき、改善意欲の醸成、諸課題の共有化が図られます。
[対外的効果]
● 第三者評価を受けることにより、利用者等からの信頼の獲得と向上が図られます。
● 事業者のサービスの質の向上に向けた積極的な取組姿勢をPRすることができます。
第三者評価を受けた保育所の感想
実際に評価を受けた保育所は、今までの運営やサービスの面で、良い点や改善すべき点が明確になり、気づくことや再確認することが出来たと答えています。そしてこの第三者評価をきっかけに、更なる「保育の質」の向上に向けて職員一丸となり取り組んでいくと、新たな目標を掲げられました。
評価者が実際に感じ受けた点は、保育理念を再認識し、職員間の情報共有と、子どもへの接し方、利用者(保護者)と向き合う姿勢が格段に向上したこと。利用者側にとっては、毎日わが子を通わせている保育所の実態把握と、意見交換、問題解決への姿勢がみえ、今まで以上に保育所の取組みを認識できる機会を得たということです。特に利用者アンケートの結果には、保育所は問題提起に真摯に向き合い、最善の策を講じる姿勢が見られています。
「ワーク・ライフ・バランス」と第三者評価事業
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進と第三者評価事業との間には何の関係も無いように思われる人が多いかもしれません。しかし先般、当法人が第三者評価を行った埼玉県内のとある保育所を例にとりますと、保育所は言うまでもなく働きながら子育てしている人を応援するための施設です。そこで何よりも求められるのは、子どもにやさしい施設づくりの視点であり、保護者(利用者)の就労ニーズにもきちんと応えられるということです。
この理念を深く追及すると、子どもにも保護者にも優しい環境は、ワーク・ライフ・バランスという視点が強く求められます。第三者評価事業はその一部にかかわるものとして大切なことだと思います。
私たちのNPOの活動としては始まったばかりですが、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)実現への支援・サポート活動として、この第三者評価事業を大切に育てていく必要があると思っています。
文:第三者評価者 櫻井慶一 / 第三者評価者 中島雅樹